よくあるご質問
境界例人格障害とはどんな病気ですか?
境界例人格障害とは、とても情緒が不安定な人格障害といえます。そのために、様々な問題を起こすこともよくあります。この不安定さがどこからくるのか、考えて行きましょう。
境界例人格障害の人は、自分の心の中の葛藤を、持っておくことが、とても苦手なのだといえます。自分と付き合っていると、さまざまな葛藤や悩みを持って置かなければなりません。このため、境界例人格障害の人達は、自分を消してしまいたい、という気持ちを往々にして持つことにもなります。
心に葛藤を持っておけないために、情緒的に、とても不安定になるわけです。 対人関係も不安定で、例えば人に対する評価も手のひらを返したように入れ替わります。あの人はとってもいい人だ、と言っていたのに、次の日には、あいつは最低だと、ひっくり返ります。
これは、相手には良い面と悪い面とどちらもあるものだ、と含んでおくことができないからです。そこに生じる評価の矛盾や、葛藤を受け入れることができないからです。
この、境界例人格障害の人の、葛藤能力の低さは、どうして起こってきたのでしょうか。その謎解きは、やはりその発達心理のなかにあります。
乳幼児が、最初に区別するのは、心地よい世界と、不快な世界です。(このとき、まだ自分と他者との区別はありません。)つまりここで言う、心地よい世界とは、心地よい自分と心地よい母親とが一体となっている世界です。逆に不快な世界とは、不快な自分と不快を与える母親とが一体となっている世界です。そしてこの二つの世界は、解離しているのです。
幼児のことを、「今泣いた子が、もう笑う」といいますが、この、子供のあり方と、境界例人格障害の極端なあり方とは、共通性があります。どちらも、良い面と悪い面とを同時に視野に入れることが、できないのです。
子供は、やがて良い面と悪い面とを、同時に視野に入れることができるようになって行きます。そこには、葛藤が生じ始めますが、それを持っておいてもいいという、安心感と耐性が身についてゆきます。(尚、この発達課題を子供がクリアするために何より必要なことは、その子を養育している親自身が葛藤を引き受ける能力を持っていることなのです。)
境界例人格障害は、この点の発達課題のクリアが不十分で、葛藤することをとても恐れます。境界例の人は、この葛藤を回避するために、矛盾することを、心の別々の引き出しに入れてしまう、ということをよくやります。この心のあり方は、専門的にはスプリット(解離)と呼ばれます。また、葛藤を避けたいために、葛藤している自分自身を消してしまいたい、という気持ちにも駆られるわけです。